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ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉 久志 訳 ハヤカワ

本書は「はみだしっ子」ファンの必読書であり、「はみだしっ子」しか感動する物がない人は読んではいけない本でもある。サーザ・グレアム・ダールトンの謎が本書によってすべて解けてしまうのである。本書の主人公、エリオット(水樹和佳とは無関係)・ローズウォーターは改名した後の名であり、本来なら彼はグレアムと名乗っていた筈なのである。では引用をドウゾ。 「ぼくはくそったれな諸君が大好きだ。最近は、きみらの書くものしか読まない。きみらだけだよ、いま現実にどんなものすごい変化が起こっているかを語ってくれるのは。きみらのようなキじるしでなくては、人生は宇宙の旅、それも短い旅じゃなく何十億年もつづく旅だ、なんてことはわからない。きみらのように度胸のいい連中でなければ、未来をほんとうに気にかけたり、機械が人間をどう変えるか、戦争が人間をどう変えるか、大都市が人間をどう変えるか、でっかく単純な思想が人間をどう変えるか、とてつもない誤解や失敗や事故や災害が人間をどう変えるか、なんてこと に注目したりはしない。きみらのようにおっちょこちょいな連中でなければ、無限の時間と距離、決して死に絶えることのない神秘、いまわれわれはこのさき何十億年かの旅が天国行きになるか地獄行きになるかの分かれ道にいるという事実──こういうことに心をすりへらしたりはしない」 「才能に恵まれたスズメの屁どもなんて、くそくらえだ。現実の大問題が、宇宙であり、永劫の時間であり、これから生まれてくる何億兆もの人間であるというのに、たった一人の人生のちっぽけな切れっぱしをきめ細かに描いて、ことたれりとしてるんだからね」 「いよいよ史上最高の皮肉な瞬間がやってきたぞ。いやしくもインディアナ州選出のローズウォーター上院議員が、わが子に対してこんな質問をしなけりゃならんとはな。『おまえは過去現在をつうじて共産主義者だったことがあるか?』」 「そう、ぼくの考えていることは、大多数の人たちにいわせれば、たぶん共産主義思想ということになるでしょうね。 だってそうじゃないですか、おとうさん。貧乏人の中で働いていれば、だれだってときにはカール・マルクスにかぶれずにはいられませんよ──それでなければ、いっそ聖書にかぶれるかだ。ぼくはそう思うんですが、この国の人たちが平等に物を分けあわないのは恐ろしいことです。こっちの赤ん坊は、このぼくがそうでしたが、広大な地所を持って生まれてくるのに、あっちの赤ん坊はなんにも持たずに生まれてくる──そんなことを許しておく政府は、不人情な政府です。ぼくにいわせれば、いやしくも政府と名がつく以上、せめて赤ん坊にだけは公平に物を分配してやるべきです。それでなくても人生は苦しいのに、貧乏人はそのうえ金のことで病気になるほど心配しなくちゃならない。もっとうまく分配をしさえすれば、だれにもたっぷりゆきわたるだけの品物が、この国にはあるんですよ」 「やっぱり、あのパチンて音がしたんだ。まちがいねえ、あのパチンて音がな」 「なんのことだよ、いったい?」 「ムショにいると、その音の聞き方が身につくのさ」 「ここは刑務所じゃないぞ」 「なにもムショの中に限ったことじゃねえ、ただ、ムシヨにいると、だんだんいろんな音が耳についてきやがるのさ。あのパチンて音も、気になる一つよ。あんたらふたり──あんたはこの大将とほんとにじっこんなのかい?ほんとにじっこんなら──それはべつにやっこさんが好きでなくたって、どんな人間だか知ってるだけでいいんだぜ──そしたら、1キロむこうからでも、あのパチンて音が聞こえたはずよ。かりにあんたがだれかとじっこんになる。すると、そいつの心の奥底でそいつをイライラさせているものがあるのに気がつく。それがなにかってことまでは、わからねえだろうよ。だけど、そのなにかが、そいつをじたばたさせたり、そいつに秘密っぽい目つきをさせたりしてるんだ。そこで、あんたはそいつにいう。『おちつけ、おちつけ、気楽にしろや』それとも、こうきく。『なんでおまえは、いつもいつもおんなじバカをするんだ?また面倒なことになるのが、わかりきっているのに』だけど、そいつと議論してもはじまらねえ。なぜって、そいつを動かしてるのは、そいつの体の中にいるなにかなんだ。そのなにかが『跳べ』っていうと、そいつは跳ぶ。『盗め』っていうと、そいつは盗む。『泣け』っていうと、そいつは泣く。だけど、そいつが若死にするか、でなけりゃ、たいした失敗もなしに自分のほしいものをぜんぶ手に入れるかしねえかぎり、そいつの中にいるものが、いずれは止まるときがくる。ゼンマイの切れたオモチャみたいにな。あんたがムショの洗濯場でそいつと働いてるとするぜ。そいつとは二十年前からの知り合いだ。ところが、そうやっていっしょに働いていると、急にそいつからパチンて音が聞こえる。あんたはふりむく。やっこさんはもう働いてねえ。えらくおとなしくなっちまってよ。まるでバカみてえだ。まるで優しいんだ。あんたがそいつの目をのぞくと、もう秘密はなくなっている。しばらくは、名前を聞いても返事できねえぐらいだ。そのうちにそいつは仕事にもどるけどよ、二度と元通りにはならねえ。そいつをイライラさせてたもののスイッチが、もうはいらねえんだ。そうよ、ぶっこわれたんだ!そいつのいのちの中で、そいつなりのヘンテコなことをやらかしてた部分が、くたばっちまったんだ!」 「いずれそのうちに、ほとんどすべての男女が、品物や食料やサービスや もっと多くの機械の生産者としても、また、経済学や工学や医学の分野の実用的なアイデア源としても、価値を失うときがやってくる。だから──もしわれわれが、人間を人間だから大切にするという理由と方法を見つけられなければ、そこで、これまでにもたびたび提案されてきたように、彼らを抹殺したほうがいい、ということになるんです」 本書にはアニメやマンガから連想されるSFらしさはまったくありません。SFファンである主人公がSF大会に乱入して語った言葉の中にあったように、数少ない経済テーマのSFなのである。ホットイフの仮定が宇宙人でもロボットでも超能力でもなくて、お金なのである。もしも、大金持ちが貧乏人に金と愛を与え続けたらどうなるか?という現実にはありえない事象を自己矛盾なしに展開してるのでSFなのである。主人公の行為の裏には罪悪感がある。サーザが愛する叔母を自殺に追い込んだように、太宰治が学生運動の同志を警察に売ったように、主人公はベトナム戦争で非戦闘員を殺してしまったという罪悪感が行動原理にある。罪の意識を負う事件は、サーザも太宰も直接人殺しはしていない。が、罪を贖おうと二人はジタバタして、さらに死体を増やし続けた。最初に人殺しをしたエリオットは、それ以後は大衆を救うことが出来た。単なる純文学とマンガより、SFマインドが如何に素晴らしいかよく判るであろう。主人公の行動をSFとはまったく無縁の宗教精神から起因したと分析したバカな登場人物もいたが、タイトルも神などを信じてるパープリン女が言ったセリフであるだけで、本書は宗教小説ではありません。安心して読んでください。神はスナック<ニーチェ>で酔っ払いに刺されて死んだってのが一般常識ですよ。(河村)

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ロシュワールド

ロバート・L・フォワード 山高 昭 訳 ハヤカワ

ふざけた宇宙人さえでてこなければ完璧なハードSFになったろう。恵まれざる者である海洋生物であるがイルカ以上の知能で、数学に関しては人間以上なのだ。コンタクトに成功した調査隊は、フーリエの最終定理に 解はあるのかと問う。「問題そのものがおかしい。xの二乗+yの二乗=zの二乗のピタゴラスの定理は真で、二次元図形の計算に役に立つ。次数を三次以上にしてそれ以上の空間の計算に応用させるなら、wの三乗+xの三乗+yの三乗=zの三乗、vの四乗+wの四乗+xの四乗+yの四乗=zの四乗、などという問題にしなければ意味がない。xのn乗+yのn乗=zのn乗で、nが3以上の時に解があるかないかなどとは無意味である。」探検隊員は叫ぶ、「だーかーらー!元のことは別のところにおいとって、xのn乗+yのn乗=zのn乗で、nが3以上の時に解があるかないかと尋ねとるんだっちゅーの!」「そんなことは判りきったことだ。」「そうでっか、で、どうなんや」「判りきったことじゃないか」「わてらアホやさかい、判らんのだす。教えてくれなはれ。」「判りきったことだ・・・」「ちょっと、だんさん、あ、遠くへ行っちゃった・・・。こんなんありか!」ちゃんちゃん! と、脚色したが、内容はこの通り漫才である。全国の数学オタクは怒り狂い、どうせ判らんなら古臭いフーリエの最終定理なんか出さずに、アレフ3と超限数、リーマントポロジーにおけるスタイナー解釈、6次元方程式のアベル代数問題、などを出せ!と思ったであろう。 推進装置を持たぬレーザービーム帆船で、太陽系からのレーザービームだけで減速までしてしまい、バーナード星のロシュワールドに到着するアイデアは見事である。もちろん調査隊は太陽系に帰還するハードシステムを持たず、バーナード星の二重惑星で死ぬことを合点承知の助で、地球での家庭の幸福も愛も要らない、好奇心を満たしたいと、生きて帰れぬ旅に出発するキャラクター達は素晴らしい。惑星内探査用のジェット機を放棄して、軌道船まで脱出しなければならないはめになった時、ジェット機の搭載コンピュータを見捨てるのが辛いと泣くキャラクターに、コンピュータが、「泣かないでください。私は単なるコンピュータです。」と慰めるシーンはこれぞSFである。コンピュータはお友達だ!(河村)

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ロボットと帝国

アイザック・アシモフ 小尾芙佐訳 ハヤカワ

人間なんてラララーララララー、私が一番賢いlと、頭のイカレタアシ −22− モフが、人間よりも高度のロボットの方が大切だと主張し、人間に危害を加えてはならないという、ロボット工学第一条より優先されるべき第零条を発表したトンデモない話である。 イライジャ・ベイリの死語200年たったが、ソラリアの色情女グレディアは長命なるスペースノイドゆえにまだ生きていた。自分のアホさに気付かず、200年の間にあらゆる事を知り、あらゆる事をやってしまったと思い込んだグレディアは、地球を壊滅させる企みに巻き込まれ、オリヴォー達と地球を守る為の戦いに嬉々として参加し、地球を守れと、ヒトラーよろしくアジテーターする事に生きがいを感じた。オリヴォーとジスカルドの実働部隊は、核攻撃から地球を守れるか!?どうなる地球!危険が危ない!! バカな右翼となったアシモフのアホさがいかんなく発揮された作品である。アホ女のグレディアは200年の間に一度もシミュレーションゲームをしなかったらしい。アジテーターの楽しみは、マルチプレイヤーズゲームやRPGの交渉のテクニックで楽しむことができるし、毎日8時間プレイしても、4年間はかかるだろうという実戦と同じレベルのSPI/HJの「太平洋戦争」等を知っていれば200年でも退屈しないし、完全数や素数を探すのも時間いるでよ。(河村)

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ロボットの時代

アイザック・アシモフ 小尾芙佐訳 ハヤカワ

・AL76号失踪す ・思わざる勝利 ・第一条 ・みんな集まれ
・お気に召すことうけあい ・危険 ・レニイ ・校正

えっとォ、アシモフ大先生のォ、ロボット工学三原則もののォ、短編集なんですけどォ、「われはロボット」に収録しなかった残り物の滓のタコの短編集なんですゥ、買わなくていいと思いますゥ。でも、知性と論理性が少ない分だけ、パープーミーハー少女には読み易いかもしれないね。作品そのものはたいして面白くないけど、アシモフの前書きが面白くて為になると思うんですのl 前書きだけを本屋で立読みしてくださいませね。にゃんにゃんx(河村)

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