クリンゴン語命名法について 

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以前にコウブチさんのクリンゴン語メーリングリストで以下のような質問をしました。クリンゴン語の命名をするときに参考にしてください。(コウブチさんに掲載の許可をいただきました。)


<2000年9月8日にDopHuDが、クリンゴン語メーリングリストに投稿>

> M'NEAが、mI'ne''a'となる法則みたいなものがあれば、教えてください。
> たとえば、mu'ne''a'でなく、mI'ne''a'になる理由とか。。


<コウブチさんから2000年9月24日に回答をいただきました。ありがとうございます。>

■mに付ける母音がuではなく、Iになることは、[klingon 417] で実例を示したので、 DopHuD さんには納得いただけたと思ったのですが、その後に当メーリングリストに参加した人もいますので、ここで改めて解説します。


■こういう固有名詞は、たてまえでは、クリンゴン語から連邦標準語に入ってきているわけですが、現実には先に英語の語があってこれをクリンゴン語の音韻規則に従ってクリンゴン語化することになります。以下、英語からクリンゴン語を「復元」する方法を考察していきます。これは同時に、本来英語の語をクリンゴン語化する場合にも通用することでしょう。
■まず基本に立ち戻ってTKDを参照すると、5.6.にいくつかの法則が紹介されています。これによれば、クリンゴンの固有名が英語化される時には、以下のような音の変化が見られるとあります。

   語頭の tlh > "kl"
   Q > "kr"
   q > "k"

つまり、英語からクリンゴン語を復元する場合は、この逆の変化をたどれば良いわけです。

   語頭の "kl" > tlh
   "kr" > Q
   "k > q

厳密に言うとクリンゴン語の復元には上の法則が通用しますが、英語のクリンゴン語化も同様とは限りません。クリンゴン語から英語への変化は英語話者の感覚に基づいて行なわれるのに対して、英語をクリンゴン語に取り込むのはクリンゴン語の感覚で行なわれるからです。でも、現状では両者をあまり区別する必要はないと思います。

きちんと明文化されているのは、以上のみです。あとは、英語を元につくられたクリンゴン語単語をよく観察して自分なりに法則を導き出すしかありません。


■TKDの5.6.をさらに見ていくと、明文化されてはいませんが、法則-Hey(法則らしきもの)を見い出すことができます。以下、私独自の見解です。例はクリンゴン語の英語化になっていますが、事実上は英語のクリンゴン語化ですので、そのように話を進めます。

◆ matlh > Maltz : 語末の "ltz"("lts") > tlh。例えば "waltz"(ワルツ)はwatlh となるでしょう。(もちろんクリンゴン語では独自の言い方があるかもしれませんが、あくまでも音訳すればという話です。以下も同様。)
◆ qeng > Kang : 英語の "a" が、いわゆる[ア]と[エ]の中間の音の場合、クリンゴン語で e になることが多いです。"General Chang"(チャン将軍)も cheng Sa' となります。
◆ qolotlh > Koloth : これは音声学的ではなく、むしろ綴りにつられているもので、素人の間ではかなり浸透している法則です。でもTKDに載っているのですから、れっきとした法則です。英語の "th" はたいてい tlh になります。
◆ qoreQ > Korax : 語末の "x"("ks") > Q。非公式ですが、"Dax"(ダックス)は DaQ になります。
◆ torgh > Torg : "-org" は -orgh になります。他の母音でも同様と考えて良いでしょう。


■その他、TKDに記載されている以下の単語からも法則-Hey を推測することがで
きます。ざっと見まわして拾っただけですので、漏れもあるかと思います。

DenIb, DenIbngan, DIlyum, Doy'yuS, Human, nural, nuralngan, qelI'qam, reghuluS, reghuluSngan, rIymuS, romuluS, romuluSngan, SermanyuQ, telunHovtay', tera', tera'ngan, tlhIngan, vulqan, vulqangan, 'elaS, 'orghen, 'orghengan, 'orghenya', 'orghenya'ngan,

betleH, bIreQtagh, ghe''or, nImbuS wej, pIpyuS, qutluch, QI'tomer, QI'tu', Qo'noS, rura' pente', ro'qegh'Iwchab, SonchIy, targh, veqlargh, verengan.

ghargh, qagh もここに含めて良いでしょう。

■以下、KGTより。

bIraqlul, bIreqtal, chechtlhutlh, chemvaH, Daqtagh, DarSeq, DayquS, ghe'tor, ghIlab ghew, ghIntaq, ghIqtal, Hur'Iq, Hur'Iqngan, jInaq, lIghon, meqleH, moQbara', nIbpoH, parmaq, qarDaS, qarDaSngan, qa'vaQ, qa'vIn, qItI'nga', qIvo'rIt, Qaj, raHta', ra'taj, Sargh, talarngan, tIqnagh, tI'qa' vIghro', toqvIr lung, tova'Daq, to'baj, tu'HomI'raH, (tlhatlh,) tlhImqaH, wornagh,
yIrIDngan, 'IghvaH

cheng < Chang; tlha'a < Klaa; be'etor < B'Etor; ghawran < Gowron;
lurSa' < Lursa; mellota' < Melota; qarghan < Kargan; vIqSIS < Vixis;
mogh < Mogh; HuS < Huss; 'atrom < A'trom; 'aqtu' < Aktuh; martaq < Martok;
qamor < Kahmor; 'antonI' < Antony; tlhI'yopatra' < Cleopatra;
HenrI' < Henry; ghIrIlqa' < Grilka; qo'leq < Ko'lek; tI'vIS < T'vis;
barot < Barot

mova' 'aqI' ruStaq などもあります。

■その他

bI'rel < B'rel
tI'ang < T'Ong
pagh < Pagh
DuraS < Duras
wo'rIv < Worf
ghIlaSnoS < glasnost
'entepray' < Enterprise
janluq pIqarD < Jean-Luc Picard
mayqel Do'rIn < Michael Dorn
raqSan bIQ-DawSon < Roxann Biggs-Dawson
rabe'rIt 'o'raylIy < Robert O'Reilly
mayqel 'anSa'ra < Michael Ansara
jan kalI'qoS < John Colicos
barbara' ma'rIch < Barbara March
ghuwI'nItlh wa'lIS < Gwynyth Walsh


以上、材料が出揃ったので、英語をクリンゴン語に「音訳」する法則について考察し
ていきましょう。

■まず一番重要なことは、クリンゴン語の音韻規則に忠実にということです。これは当たり前のことでいちいち言う必要はないのではないかと思う人も多いでしょうが、同時にこれを無視して、まったく考慮に入っていない人も多いものです。
■クリンゴン語に使える音(あるいは文字)は、a, b, ch, D, e, gh, H, I, j, l, m, n, ng, o, p, q, Q, r, S, t, tlh, u, v, w, y, ' だけです。
■これらの音のつなげ方にもかなり厳格な規則があります。クリンゴン語の音節構造は以下の形式に限られています。(Cは子音、Vは母音を表します。)

   CV  例:tI, 'a。
   CVC 例:tI', tIv, 'e'。
   CVCC(ただし -rghのみ。例外:-rD。)
       例:targh, torgh, Hurgh。
         pIqarD。

簡単に言うと、クリンゴン語のすべての単語は、上の音節単位を部品として成り立っています。ほとんどは、1音節の語ばかりですが、時々見かける長ったらしい単語も、上の部品に分解することができます。

   romuluSngan --> CV-CV-CVC-CVC
   tu'HomI'raH --> CVC-CV-CVC-CVC
   tlhI'yopatra' --> CVC-CV-CVC-CVC

■ですから、まず元になる英単語の音節構造をクリンゴン語風に変換する必要があります。英語の音節構造はかなり豊富です。母音1つだけの「V」から、果ては「CCCVCCCC」などというのまであります(ちなみに a と strengths)。
■クリンゴン語にはVつまり母音で始まる音節がありませんので、母音で始まる英単語は頭に ’を付けて、CVあるいはCVCの形を作ります。

   例:Antony > 'antonI'; Aktuh > 'aqtu'; Elas > 'elaS

■CCで始まる音節は、以下のように音節を正規化します。

   "kl" > tlh 例:Klingon > tlhIngan; Klaa > tlha'a

   "kr" > Q 例:Kras > QaS; Krell > Qel; Kruge > Qugh

   "tr" > D 例:Trillium > DIlyum; Troyius > Doy'yuS

   その他 CC > CIC(補間母音としてIを挿入する。)
   例:B'rel > bI'rel; glab > ghIlab; K'Tinga > qItI'nga'
     brak'lul > bIraqlul; Grilka > ghIrIlqa'


■ここで誤解があるといけませんので、少し説明を加えておきます。"B'rel" や"K'Tinga" の綴り中の ’はクリンゴン語のような声門閉鎖音ではありません。これは、前後の子音を分けて、いっしょに発音しないことを示す記号です。スタートレックに出てくる固有名には、このC’Cで始まる語が、それこそうんざりするほどあります。いつ頃からこのような変な名前が使われ始めたのかは、調べないとわかりませんが、TOSの T'Pau や T'Pring あたりでしょうかね。基本的には英語の語頭には存在しない子音連続を使って、馴染みのない音の連続を作り出すことによって、異星風の雰囲気を出しているものと思われます。読み方は、けっこう人によっても違うというのが実情です。

◆K'mpec, K'Temocなどは、頭にかるくkの音を添える感じで発音されています。人によって、kに軽く母音を添えている人もいるようです。
◆クリンゴン艦の等級 "K'Vort" は、ウェスリー君が[ケイヴォート]と発音しています。
◆ロミュラン艦の等級 "D'deridex" は、データが[ディーデリデックス]と発音しています。
◆ガウロンの父親の名前 "M'Rel" は、クタールが[エムレル]と発音しています。
(クタール "K'Tal" は番組中では呼ばれませんので発音は不明ですが、たぶん[ケイトル]に近いのではないでしょうか。)

以上のことから、語頭のC’はそのままローマ字名で読まれることも多そうです。

でも、"B'rel" の場合はどうでしょうか? ご存知の通り "bring", "bright", "brown" など、語頭の "br-" は英語ではよくある子音連続です。ということは、この場合は[ブレル]ではなく[ビーレル]と読むことを示しているのでしょうか。
だったら "Beerel" などと綴れば良いと思うのですが、やはり他の語の影響を受けているのでしょうか。

以下でも解説していますので、ご参照ください。
http://www.asahi-net.or.jp/~VZ4S-KUBC/sbx15.html


■CCで終わる音節は、後ろのCが省略される傾向にあります。

   例:glasnost > ghIlaSnoS

■ちなみに、語頭の連続子音には母音を挿入して、語末の連続子音は後ろを省略するという法則は、例えば東南アジア諸語の外来語移入の場合にも見られるものです。


■以下、各音について見ていきます。あくまでも私個人の見解ですので、間違いもあるかもしれません。また、言語の規則や法則には例外が付き物ですので、これが絶対だと思ってはいけません。

◆"a"[a] > a 例:Mara > mara; Valkris > valQIS; Aktuh > 'aqtu'
◆"a"[ei] > ey 例:Kahless > qeylIS
◆"a"[ae](アとエの中間) > e 例:Kang > qeng; Chang > cheng
◆"b"[b] > b 例:B'rel > bI'rel; Nimbus > nImbuS
◆"c"[k] > q 例:Cardassia > qarDaS; Jean-Luc > janluq
◆"ch"[ch] > ch 例:Chang > cheng; Sonchi > SonchIy
◆"ch"[k] > q 例:par'Mach > parmaq
◆"ch"[x] > H 例:racht > raHta'
◆音節頭の "cl"[kl] > tlh 例:Cleopatra > tlhI'yopatra'
◆"d"[d] > D 例:Duras > DuraS; Picard > pIqarD
◆"dg"[dj(ジュ)] > j 例:kradge > Qaj
◆"e"[e] > e 例:Elas > 'elaS; Deneb > DenIb
◆"e"[i:] > Iy 例:Remus > rIymuS;
(DenIb では後ろのeがIになっています。"Deneb" のeは2つとも[エ]ですが、後ろに -ia が付くとiの音やアクセントの影響で[デニービア]にでもなってその影響なのでしょうかね。)
◆"e"(schwa;あいまい母音) > I 例:K'Vort > qIvo'rIt; B'rel > bI'rel
◆"f"[f] > v 例:Ferengi > verengan; Fak'lhr > veqlargh
◆"g"[g] > gh 例:Gowron > ghawran; Kargan > qarghan
◆"h"[h] > H 例:human > Human; Henry > HenrI'
◆"i"[i] > I 例:Klingon > tlhIngan; Ligon > lIghon
◆"i"[ai] > ay 例:mayqel > Michael
◆"j"[dj(ジュ)] > j 例:jinaq > jInaq; Jean-Luc > janluq
◆"k"[k] > q 例:Kang > qeng; Kor > qor
◆音節頭の "kl"[kl] > tlh 例:Klingon > tlhIngan
◆音節頭の "kr"[kr] > Q 例:Kruge > Qugh; Kronos > Qo'noS
◆"l"[l] > l 例:Lursa > LurSa'; brak'lul > bIraqlul
◆音節末の "ltz","lts","lz"など[lts] > tlh 例:Maltz > matlh
◆"m"[m] > m 例:Mara > mara; A'trom > 'atrom
◆"n"[n] > n 例:Neural > nural; Vulcan > vulqan
◆音節末の "ng"[ng] > ng 例:Chang > cheng; T'Ong > tI'ang
◆"o"[o] > o 例:Kor > qor; Kronos > Qo'noS
◆アクセントのない"o"、短い"o" > a 例:martaq > Martok; warnog > wornagh
◆"p"[p] > p 例:pIpyuS > pipius; par'Mach > parmaq
◆"r"[r] > r 例:Romulus > romuluS; darsek > DarSeq
◆"s"[s] > S 例:Sonchi > SonchIy; vixis > vIqSIS
◆"sh"[sh] > S 例:Sherman's planet > SermanyuQ
◆"t"[t] > t 例:Torg > torgh; K'Vort > qIvo'rIt
◆音節末の "th"[th] > (1)tlh, (2)H
   例:(1)Koloth > qolotlh; (2)mek'leth > meqleH
◆音節頭の "tr" > D 例:Trillium > DIlyum; Troyius > Doy'yuS
◆"u"[u(:)] > u 例:Jean-Luc > janluq; kut'luch > qutluch
◆"u"[ju(:)] > u 例:Duras > DuraS; Neural > nural
◆音節末の "um", "un", "us" > um,un,uS
   例:trillium > DIlyum; Tellun Star System > telun Hovtay'
     Romulus > romuluS; Regulus > reghuluS
◆"v"[v] > v 例:Valkris > ValQIS; K'Vort > qIvo'rIt
◆"w"[w] > w 例:Worf > wo'rIv; warnog > wornagh
◆音節末の "x"[ks] > Q 例:Korax > qoreQ
◆音節末の "gs"[gz] > Q 例:Biggs-Dawson > bIQ-DawSon
◆語中の "x"[ks] > -qS- 例:Vixis > vIqSIS(うまく音節の型に当てはめられる場合)
◆"y"[j] > y 例:Yiridian > yIrIDngan
◆音節末の "y"[i] > (1)Iy, (2)I'
   例:(1) O'Reilly > 'o'raylIy; (Sonchi > SonchIy)
     (2) Antony > 'antonI'; Henry > HenrI'
◆音節頭の "zl"[zl] > tlh 例:zlim'kach > tlhImqaH
◆音節末の "-Vrg" > -Vrgh 例:targ > targh; Torg > torgh
(e,I,u の場合は例がありませんが、それぞれ vergh, chIgh, Hurgh という語があるので、同様の法則が適用できると思われます。)
◆音節末の "-ard" > -arD 例:Picard > pIqarD
◆音節末の "VrC"(母音+r+子音) > V'rIC
   例:March > ma'rIch; Robert > rabe'rIt; K'Vort > qIvo'rIt
     Worf > wo'rIv; Dorn > Do'rIn
(同じ音形と思われる Hur'q > Hur'Iq にこの法則が適用されていないのは、やはり綴りの影響でしょうか。)
◆語頭の " C' " > (1)CI, (2)CI' 
    例:(1) K'Vort > qIvo'rIt; K'Tinga > qItI'nga
      (2) B'rel > bI'rel; T'Ong > tI'ang; T'vis > tI'vIS
   例外:B'Etor > be'etor;
◆音の脱落:連続子音や長い語の場合、時として音節末の音が脱落することもあります。
   例:bregit lung > bIreQtagh (-git > -Q)
     glasnost > ghIlaSnoS (-st > -S)
     Enterprise > 'entepray' (-r > 0; -se > 0)
     raktajino > ra'taj (-k > 0; -ino > 0)
(-ino を英語化する際に付加された派生語尾と解釈したものでしょうか。)

◆上記以外にも、法則-Hey を発見した人は、当メーリングリストで発表しましょう。

■ ’についてですが、これはけっこう難しいもので、私自身論理に基づいた確信があるわけではありありません。一応、以下のように考えています。

◆開音節は作らない。開音節とは母音で終わる音節、つまりCVの形の音節です。具体的には例えば、"-ba" で終わる語があれば、これをクリンゴン語化するには -ba'と後ろに ’を付けます。これはかなりの場合に当てはまるのですが、CV型の音節自体はクリンゴン語にも存在しますので、例外も多いことは否定できません。まあ、迷ったら付けると考えれば間違いは少ないでしょう。
   例:tika > tI'qa'; Lursa > lurSa'; Barbara > barbara'
  例外:Mara > mara; Klaa > tlha'a; Ansara > 'anSa'ra
"Klaa" の場合は、原語の "-aa" 自体が間延びした音なので、後ろに ’を付けなかったのかもしれません。"Ansara" の方は、発音を聞いたことがないのではっきりとは言えませんが、もしかしたら真中の "-sa-" の部分にアクセントがあるため、こちらに ’を付けて、後ろの "-ra" にはあえて付けなかったのでしょうか。
◆音節が母音で始まる場合には、前に ’を添える。これはクリンゴン語の音節構造上、必要な措置で、例外はありません。
  例:Aktuh > 'aqtu'; Elas > 'elaS; Organia > 'orghen/'orghenya'

■惑星名に関してはKGT p.141 - 142 を参照。

■まとめると、基本的には発音を元にしていますが、一部綴りの影響を受けているものもあります。また、現実の世界から考えると、オクランド博士が訳した時期によっても傾向が変わっている部分もあります。例えば、語末の "-i","-y" は、当初 Iyとなっていたものが I' になっています。言語というものは常に変化し続けるものです。日本語への外国語の移入の仕方を見ても、かつては原語の意味や語源を考えてふさわしい訳語を漢字を用いて造語していましたが、現代ではカタカナで音訳するのが一般的になっています。そのカナ音訳を見ても、vを「ブ」にしていたのを「ヴ」にするようになったり、例えば "computer" の訳語が「コンピューター」から「コンピュータ」へと変わり、語末の "-er" に「ー」を使わなくなりました。ですから
今ここでまとめた法則も永遠で絶対なものというわけではなく、あくまでも今現在はそういう傾向にあるというだけに過ぎません。最終的には DujlIj yIvoq!


■"M'NEA" についてですが、これがどう読まれるのかは、本編を実際に観て聴いてみないと何ともいえません。

英語で語頭に "mn-" が来る単語は大抵はギリシア語起源の語ですが、普通はmは発音されません。以下に示す例は、すべて「記憶」に関する専門用語で、日常会話ではまず使われないような語ばかりです。すべて、語頭の発音は[ニー]あるいは[ニ]となります。

   mneme, mnemon, mnemonic, mnemonically, mnemonics, Mnemosyne

このことからすると、"M'NEA" の ’は、mとnを切り離して、mもきちんと発音させる役目を持っているように思えます。

では、"M'NEA" はどう読むのでしょうか? 上述のようにmはしっかりと発音されることと思います。単純に考えれば、[ムネア]([munea]ではなく[mnea])のようにも思えます。TNG「クリンゴン帝国の危機パート1」(Redemption Part I)では、ガウロン総裁の父親の名前 "M'Rel" は[エムレル]と発音されていますので、もしかしたら "M'NEA" の方も[エムネア]と読まれるかもしれません。この場合、ローマ字名につられた読み方ということになります。固有の名称は、役者ごとに勝手に読んでいることが多いのが実情です。このようなマイナーな名前の読み方は、発音例が一個しかなかったりしますので、かえって読み方を決定しやすいものです。いずれにしても番組を観ないことには話になりませんけど。

この手の固有名詞をクリンゴン語として正規化する場合、字面から行なわれることが多いようです。つまり、[エムネア]ではなく[ムネア]として考えるのです。

母音の部分をどう読むかも問題です。[エア]なのか[イー]なのかわかりませんが、とりあえず[エア]とします。

■以下、"M'NEA" と[mnea(ムネア)]と読むとして、これをクリンゴン語化していきます。

"M'NEA" の音節構造は以下であると考えられます。

"M'NEA" --> CCV-V ("EA" は二重母音でも長母音でもなさそうです。)

CCVもVもクリンゴン語の音節にはなれませんから、変換が必要です。

CCV-V --> C/CV/V --> CVC/CVC/CVC
mne-a --> m/ne/a --> mI'/ne'/'a'

◆とりあえず、"M'NEA" を音のみに注目して書き換えると "mnea" となります。
◆ "mn-" と先頭に子音が2つ続いていますが、クリンゴン語には語頭に子音連続は立てないので、操作が必要です。原綴りで "M" と "N" が "'" で分けられているので、まず "m" と "n" の間に区切りを入れます。
◆母音の "-ea" については、クリンゴン語にはこのような二重母音はありませんので、e と a でそれぞれ1音節づつ作ることになります。

というわけで、"mnea" は "m/ne/a" と区切りを入れることになります。以下、各区切りをクリンゴン語の音節として通用する形に仕立て上げます。

◆"m" > mI':子音のみでは音節になりませんので、母音を補います。こういう場合、日本語ではuが一般的ですが、クリンゴン語ではIになります。ホームページや別途メールで解説しましたから、もう説明の必要はないですよね。原則として、スタートレック用語で「C’」で始まる語は、クリンゴン語では「CI’」になると覚えましょう。後ろの ’は、開音節を避けるためか、あるいは原綴りの影響と思われます。
◆"ne" > ne':後ろに ’を付ける確固たる規則はないのですが、感覚的に付けたまでです。でも、後に続く音節が 'a' のように「’V」で始まっている場合には、前の音節末にも ’を付けた方が良さそうです。
◆"a" > 'a':クリンゴン語には母音で始まる音節はありませんので、前に ’を付けます。後ろにも ’を付けたのは、個人的な感覚によるものです。

以上のような論理によって、"M'NEA" を mI'ne''a' としました。


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