SF-tuzureorim03


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(2007−03)

−2007年5月19日−


『時の眼:A・C・クラーク&スティーヴン・バクスター』


 いやあ、21世紀になっても巨匠クラークの作品を読めるとは。
バクスターという強力な助っ人があればこそなのだが、クラークと
いう人は、死ぬまでSF作家であり続けるのだろうね。     

 <タイム・オデッセイ>と銘打たれたこの『時の眼』という作品
をなんと評せばいいのだろう。クラークと言えば<スペース・オデ
ッセイ>シリーズにおけるモノリス。人類を見守る謎の先駆的知性
を象徴するモノリス。今回は中空に浮かぶ球体の<眼>がモノリス
の役割を演じる。ある日突然、200万年におよぶ地球の各時代が
パッチワークのようにつぎはぎされた世界。2037年の国連平和
維持軍のビセサ・ダット。そして地球周回軌道の宇宙船ソユーズ。
1885年の英領インド軍と若き従軍記者キプリング。紀元前四世
紀のアレクサンドロス大王の軍隊。十三世紀初頭のモンゴル高原。
チンギス・ハンの帝国と軍隊。物語の始まりに登場するのは、直立
二足歩行をはじめたヒトザル。私たちの祖先であるヒトザルが宙に
浮かぶ球体、<眼>に出会うところから始まる。映画「2001年
宇宙の旅」のプロローグとの類似性を想起せぬわけにはいかない。

 結局、この作品はクラークの抽き出しをあけて、切り口を変えて
編まれた物語ということに尽きるだろう。元の<スペース・オデッ
セイ>シリーズに対する<直角編>として表されているという。そ
の通りだ。世界観としては既にクラークが提示してきたものを、切
り口を変えて描いたにすぎない。まあクラークファンとしてはこれ
でも許容できる範囲ではあるが、ダン・シモンズの『イリアム』を
読んだ後では、いかにもスカスカな感じがして居心地が悪い。まだ
続編があるらしい。文句言いながらも、また読んでしまうんだろう
ね。ほんまにファンちゅうもんは辛いもんだね。        




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