SF-tuzureoriF09


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(2000-9)

−2000年4月23日−


『稲妻よ、聖なる星をめざせ!:キャサリン・アサロ』


 前作『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』のコンセプトをきっちりと継
承した作品である。<スコーリア戦史>というスペースオペラのシ
リーズものであるわけだから当然なのだが、本作『稲妻よ、聖なる
星をめざせ!』は、前作から舞台と時代を移しただけで、前作から
の連続性はいささかも失われていない。            
 <ローン系サイオン>の超感能力者が主人公で、対立する<アリ
スト階級人>と、第三極の地球連合圏。この構図に変化や新奇さは
ない。<ローン系サイオン>の出自や、6000年前に地球から連
れ去られた彼らの先祖が古代マヤ族であることが推察されるように
なった点などが、前作より深まったところと言えるだろう。とりわ
け<ローン系サイオン>の出自については、さまざまなエピソード
が語られる点で、今後もこの<スコーリア戦史>を読み続けようと
いう方には、見逃せない一作である。その意味では前作から読まれ
ることをお勧めしたい。                   

 本作でも、物語はマヤ族の末裔である少女ティナ、女性の視点か
ら語られる。1987年という直近の過去に、24世紀から迷いこ
んだジャグ戦死オルソーと少女ティナが出会うところから物語はは
じまる。この設定にはちょっとした仕掛けがあって、1987年と
いう「現在」(私たちから見れば直近の過去)は、私たちの宇宙と
は少し時間線の異なる宇宙らしい。その宇宙では、米国は「アメリ
カ連邦国」。そしてオルソーがやってきた24世紀の未来の宇宙の
ほうが、私たちの宇宙の時間線の延長にあるらしい。      
 少し異なる宇宙の、マヤ族の少女ティナが、この<スコーリア戦
史>の宇宙と出会う、という主題で物語は編まれている。ティナが
エンパス(超感能力者)であることで、物語は物語となりうる。 
 登場するガジェットも基本的には前作を継承したものなので、こ
こは純粋に連作のなかの「ティナの物語」に耳を傾け、楽しめばい
いのだろう。前作がどきどき、はらはらする冒険活劇ならば、本作
はよりラブストーリーへシフトしている、と言ってもいい。このあ
たりは純粋に物語を楽しめばいいのだが、私のようなおじさんでも
読み続けられるのは、やはり作者アサロが現役の物理学者であるこ
とから、単なる冒険活劇ではなくハードSFの味わいがするし、私
たちの想像力を違和感なく励起し続けてくれるからなのだろう。 

 どうも私などは、この文庫本の邦題のつけかたや、表紙のイラス
トを見ただけで、ちょっと敬遠してしまうタイプなのだが、できれ
ばこの<スコーリア戦史>シリーズは読み続けてみたい。この邦題
や表紙絵はなんとかなりませんかね、早川書房殿。(苦笑)   




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