SF-tuzureoriD7


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(99-13)

−1999年7月3日−


『リメイク:コニー・ウィリス』


 最近の綴れ織りのなかで、SFにおける小説と映画の相関につい
いて触れることが多くなった。多分これは、言語表現がデジタライ
ズされる局面のなかで、SFという<想像力>と<構想力>、そし
て<批判的精神>に依拠した表現が、どのように変成、転位せざる
を得ないか、という問題に突き当たってきたということではないか
と私は考えている。その私の眼差しとは違ったベクトルから映画そ
のものを主題としたSF小説が顕われた。献辞が「フレッド・アス
テアに捧げる」となっているのは天晴れ。この作家は本当に映画好
きらしい。映画オタクの真骨頂とでも言うべき、作品全編にわたる
名作の数々の場面と名台詞のオンパレードは圧巻ですらある。  

 近未来のデジタル・ハリウッドの様相は容易く想像できるものだ
し、あまりにも容易くリメイクができるようになると実写が廃れ、
過去の作品を継ぎはぎしただけの作品だけが商業価値を持ち生き残
るという設定も理解しやすい。しかし、本当にそうだろうか。私た
ちが現在のシネマとして了解しているものが、未来にわたってその
ままの姿で生き残る、という想像力は貧しくはないか。きっと、そ
のような問題意識とは決してクロスすることはない地平で、この作
者はただただ映画好きであることにこだわったに違いない。むしろ
作者自身のインタビューを読むかぎり、彼女は作家である自分のア
イデンティティを確認するために書き綴ったといった方が良いのか
も知れない。この徹底した執着ぶりは、たしかにマニアの世界。 


 作品自体は読みやすく、<映画>に執着する主人公トムと、<ミ
ュージカル>と<ダンス>に執着するアリスとの出会いから物語り
は始まる。なんだか青春恋愛ものっぽい展開はちょっと切ない。私
はトムをサポートし続けるヘッダがいじらしく思えた。その切なさ
はきっと作家の資質なのだろう、と思う。いろいろと面白いところ
は沢山あるのだが、ハリウッドに群れる若い女優志望の女の子を映
画会社の役員が<多元宇宙論>で口説くくだりなどは笑えたね。だ
が、なによりもこの作品は、全ての現実が嘘臭く思える青春葉期に
抱く<本物:リアル・シング>への渇望感が主題だと言ってよい。

 訳注に掲載されている数々の名画を眺めていると、想像以上に私
自身も数多くの映画を観てきたことに気付かされる。たしかに独身
時代には、映画館に入り浸っていた時期もあった。広島では映画の
日というイベントがあり、その日の抽選で、たしか1ヶ月だか3ヶ
月だか、いや本数の上限があったのか忘れたが、映画館へのフリー
パスのようなものを貰った憶えがある。そのときはひと月に10回
以上、映画館へ通ったと思う。あらゆるSF好きは、映画好きであ
る、なんてSFフリークマニフェストはなかったかな、なんてね。








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