SF-tuzureoriC8


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(99-4)

−1999年2月24日−


『造物主の選択:J.P.ホーガン』


 私は紛れもないホーガン・ファンである。          
ここは、感涙のホーガン復活を声高に宣言したいところだが、どう
も盛り上がりきれない。もともと85年に創元推理文庫から出版さ
れた前作の『造物主の掟』も、テーマは面白いのに作品には不満を
感じていた。率直に言って、今回の読後感もそれに近い。    

 ホーガンという作家に着目すれば、たしかに嘗てのホーガンらし
さを取り戻しつつあると思う。創元SF文庫から出版された順番で
考えると、一昨年の『内なる宇宙』、昨年の『量子宇宙干渉機』と
ホーガン復活を大いに期待させてくれた。それだけに、という思い
もある。だが、原作が書かれた順としては、この『造物主の選択』
は『量子宇宙干渉機』より1年前の95年の作品なのだから、まだ
これからのホーガンに期待したい、というファン心理がつらい。 

 さて、作品のほうに着目すれば、前作の『造物主の掟』を読んで
いないと、この<続編としての面白み>を堪能することはできない
ので、やはり前作から読まれることをお勧めする。ところが前作を
読んでいる人には、逆に序盤の展開はどうにもつまらないものだろ
う。懐かしいキャラクターのいかさま心霊術師ザンベルドルフ氏と
土星の衛星タイタンに棲息する機械生命タロイド達との再会がほん
のりと嬉しいくらいで、タロイド文明の内部抗争や人類の浅はかな
干渉もあまり好きになれないホーガンの謀略サスペンス作家として
の一面が露出していて面白くないのだ。好奇心を駆り立てられるの
はやっと第二部に入ってからのことだ。機械生命タロイド達の<造
物主>がやっと登場してからのことだ。ここで、おそらくホーガン
終生のテーマであり、私がホーガンにもっともシンパシーを抱くテ
ーマが露出する。それは、生化学的な進化によって産まれた知性体
の不可避な欠陥というテーマである。ホーガンはあっさりと言って
のける。『欠陥とは、ひと口に言えば、寿命に限界があることなの
だ』と。そこには、言い換えれば<限定的な有機的生命体>の後継
者とは誰なのかというテーマが二重写しになることだろう。後継者
が機械生命なのか、もっと姿かたちを変えた有機的生命なのか、現
在は想像力の到達するままに夢想せざるを得ない。       
 太陽系より1千光年離れたタールという惑星で鳥類から進化した
<ポリジャン>というキャラクターも悪くない。人類よりも進化し
た知的生命にとって、経済的な豊かさを成就してしまった社会のな
かでは、豊かになることも経済的に成功することも自己実現のモチ
ベーションとならず、少しばかり屈折した『とにかくどんな形でも
機に乗じて相手をだしぬくこと』が唯一モチベーションたりえる、
なんていう洞察には、最近のホーガンのいささかシニカルな人間観
が顕われている。そして、その<ポリジャン>を出し抜く人工知性
<ジニアス>もいい。だが、終盤ではこのキャラクター達を活かし
きることなく、人類があっさりと<ポリジャン>も<ジニアス>も
出し抜いて、めでたしめでたしとなるエンディングも腑に落ちない
ものになってしまっている。どうしたんだろうね?ホーガンさん!

 うむ、まだまだ欲求不満は続くのだろうか。早く、新作が邦訳さ
れることを期待したい。あっ、念の為に追記しておくが、メタンの
雲に覆われた高圧で極低温の<タイタン>の世界を想像するだけで
も、この『造物主』ライフメーカーシリーズの価値はあると思う。








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