SF-tuzureoriC7


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(99-3)

−1999年2月14日−


『スタープレックス:ロバート.J.ソウヤー』


 正統派スペース・オペラの90年代における復活!!なんて言う
と、ちょっと違うんじゃない、って声が聴こえてきそうだね。  
 しかし、痛快でスケールが大きい、という点ではソウヤーは見事
である、と誉めておこう。                  

 ここのところ、SF以外のものに読書の時間を割くことが多くて
なかなか読み終えるのに時間がかかったが、本来この作品は引き込
まれるように読み進むことができるだろう。それくらいソウヤーは
ストーリーテラーとしては上等になっていると思う。既にネット上
でもいろいろな読後感が披瀝されている。実はソウヤーは「スター
トレック」の続編を書こうとしていたのだとか、面白い話が披露さ
れている。そういった話題も「なるほど」と思えるような娯楽作品
だと思ってもいい。しかし、間違いなくスケールの大きなスペース
オペラでもあるのだ。                    

 大抵のSFフリークであれば、既知の「現代物理学の謎」が次々
と解きあかされるさまは、痛快でもある。最大の想像力の産物は、
やはり<暗黒物質:ダークマター>に関わる部分であるだろう。 
 宇宙空間のなかでは瞬くはずのない<星のまたたき>を発見する
ところから、<暗黒物質:ダークマター>を想像することは容易い
が、まさかその<暗黒物質>が木星なみの大きさの知的生命体とし
て群居しているなんてところはやはりソウヤーだね、と思ってしま
う。この辺りの、些か強引なまでの想像力のジャンプは「さよなら
ダイノサウルス」「ターミナル・エクスペリメント」でも、同じよ
うな印象は覚えたものだ。このあたりは、この作家の魅力と危うさ
が同居している資質なのだと思う。              

 この他にもアイデアがいっぱい。              
未来の知性体たちが構築した<ショートカット>と呼ばれる、星系
から星系への即時移動を可能とする無数の入口・出口。周回するタ
キオンに囲まれた微少な球・点である、その<ショートカット>を
恒星が通過していくさまを描写するくだりは、感動的ですらある。
そして未解明の2種類のクォーク。不老不死の獲得。銀河の渦状肢
が産まれた謎。緑色の未来の恒星。まだまだある。ソウヤーはこれ
でもか、とアイデアを鏤める。剛腕と言ってもいい。痛快と形容し
てもいい。そして100億年というタイムスパーンを、物語の必然
として提示するあたりにもスケールの大きさを感じる。まあ、ネタ
ばらしはこのあたりにしておこう。              

 たしかに面白く、スケールの大きな作品なのだが、どこか薄っぺ
らに感じてしまうのは何故なのだろうか。おそらくこの作品を含め
て、ソウヤーの作品を支配する感性の基底には、<映画的なもの>
つまり映像的な、視覚的な想像力が潜んでいるからだろう。   
 そこでは、私たちにとって馴染み深い映像作品、たとえばスター
トレックだとか、さまざまな映画・TV的なるものが想起されるか
らだ。その地平では、この作品『スタープレックス』ですら斬新で
はない、と私たちは受感する。この隘路を言語表現はどこへ突き進
んでいくのだろうか。私たちは限り無く欲深くなっているのかも知
れない。                          

 息子が先日からはまっているPSの新作ゲーム、<FF8>を斜
め後方から覗き見る。映像の世界は高速なチップと労を惜しまない
ゲームメーカーたちによって、長足の進歩を遂げつつある。既に消
費されている、そのような想像力の地平を、文学としてのSFはど
のようにして超克していくのであろうか。それとも、静かな衰退に
向かうのであろうか。                    








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