SF-tuzureoriC6


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(99-2)

−1999年1月30日−


『ロボットと帝国:アイザック.アシモフ』


 古い日記を読み返す。失われていた記憶の細部が蘇る。しかし、
そこには新たな驚きは産まれない。              
 アシモフの『銀河帝国興亡史』と『ロボット』、その双方のシリ
ーズを結節する、最後の作品というわけだ。登場人物/ロボットの
大半は、過去の作品で出会ってきた者達ばかりだ。懐かしさばかり
が作品を読む時間を支配し、その時間は冒頭で述べたように、まる
で古い日記を読み返す感覚なのだ。それも、またよいものだ。  

 アシモフは、最後まで自らの作品に忠実であろうとした。これほ
どまでに律儀でなくても、という感想を持ったのは私だけであろう
か。アシモフはきっと辻褄のあわないことは嫌いだったのだろう。
 かの『ロボット工学・三原則』を巡って延々と繰り返される二人
のロボット、ダニールとジスカルドの禅問答のような議論。こちら
は些か鼻白みながらも、若いときに友人と交わした青臭い議論を回
想するような気分で読み進む。新たな発見ではなく、既知の議論の
欠点や不十分さを、ああこれは日記なんだから、と許してしまうよ
うに読み進むしかない。                   
 おそらく、この作品ではじめてアシモフを読む、という体験をす
る人は少ないのではないだろうか。私のように長い時間をかけてア
シモフを読んできた者たちが、どうしても避けて通れないさ、とい
うように読んでいる情景しか想像できない。若い人たちが、どんな
風にこの作品に出会うのか、問うてみたい気がする。      

 登場人物たちの感性は、20世紀末を生きている私たちにとって
あまりにも古色蒼然としており、まるでこれは未来の銀河帝国へと
連なる物語ではなく、過去のローマ帝国史にでも通じていく物語の
回廊を漂っているかのような気分になってしまう。おそらくアシモ
フはそれを承知で、最後まで彼自身の期待する人間観を標榜しよう
としたのだ。私たちは、そのメッセージを受け取るだけでいい。 
 それが20世紀という時代の神話の終焉を予知した巨匠の最後の
アンチテーゼであったことだけを、印象に留めよう。未来はきっと
巨匠を、そして私たちをも裏切るかのように、過去の者となってい
く私たちの想像力の地平を越えていくであろうから。      








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