SF-tuzureoriC2


SF綴れ織り

TommyおじさんのSF綴れ織り(98-22)

−1998年11月20日−


『時空ドーナッツ:ルーディ・ラッカー』


 ルーディ・ラッカーの作品は殆ど読んでいない。ほとんど表紙絵
を見たところで敬遠してしまう。だから作品の好き嫌いではない。
 今回はタイトルの『時空ドーナッツ』に惹かれて読みはじめた。
なんだろう、好きにも嫌いにもなれないと言うと変だね。ルーディ
の感性には理解できるところは沢山ある。ストーンズやザッパなど
ロック小僧だったおじさんと共通するものはある。この作品が70
年代後半に書かれたもので、ルーディの処女長篇だということも理
解できる気がする。しかし、とても面白いとも思えない。    
 お話しはたしかに荒唐無稽だ。社会生活の殆どを巨大ネットワー
クシステムとロボットが制御している社会。一部の機械工や技術系
労働者はいるが、殆どの人間はドリーマーと呼ばれ、始終ラリって
いるか、<フィズウィズ>という巨大ネットワークに接続してホロ
グラムの世界に浸る。安全が最優先され、心のなかに不満があれば
<フィズウィズ>が不満を解消してしまう。          
 ぬるま湯の安定した社会。しかし、こんな世界をリアルに想像で
きる筈がない。はじめから破産した空想のうえに描かれた、乱雑な
キャンバスに揺らぐ物語。ハイで、ぶっ飛んでいるとも思えない。

 <循環スケール理論>という着想は面白いのだが、まるで昔のタ
イムマシンのようなスケール船に乗り、無限に近く縮小することで
無限大に転位し、<大きさ>のスケール循環旅行が実現する。着想
の面白さを打ち消す、想像力の貧困と欠如。そして、終盤はフィズ
ウィズが錯乱し、ロボットや機械達が無差別殺人をはじめる。フィ
ズウィズはビッグブラザーの比喩なのだ。これが70年代に書かれ
たものだから、とフォローすることもできない。かと言って退屈で
たまらない作品でもない。それなりに、にやにやしながら読んでし
まうようなお話しなのだから。だから好きでも嫌いでもない、とし
か言いようがない。<フィズウィズ>にジャックインするエンジェ
ルたちが登場するからという理由で、間違ってもサイバーパンクの
前哨だなんて思えない。これはどう見てもゲーデル好きのルーディ
のメタ私小説なんだ、と思う。                

 さて、現在公開されているSFスリラー(??)映画、「ダーク
シティ」のノヴェライゼーションが新潮文庫から出版されている。
 妻が買った文庫本を読んだ。やはり、映画は映画の世界にあり、
小説は小説の世界にある、とつくづく思った。もともと小説をベー
スにしているわけではないので、まるでシナリオを読むように味気
なかった。映画ならば、もう少し違ったふうに楽しめるだろうに、
と残念だった。                       
 まあ、どちらもヘビーではないので、気軽に読める作品だろう。




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